給与デジタルマネー払い(デジタル・ペイロール)とは?解禁に向けた最新情報と企業が導入すべき理由を解説
給与デジタルマネー払い(デジタル・ペイロール)とは、資金移動業者が提供するスマートフォンの決済アプリや電子マネーなどに給与を支払うことです。
給与デジタルマネー払いの議論がスタートした2015年以降、早期解禁に向けて政府内で幾度とく議論が交わされてきましたが、ついに解禁のときを迎えようとしています。
そこで本記事では、
などについて解説します。
※本記事の内容は、2022年11月13日現在のものです
給与デジタルマネー払い(デジタル・ペイロール)とは
給与デジタルマネー払い(デジタル・ペイロール)とは、銀行口座を経由せず資金移動業者の口座へ賃金支払いをおこなう仕組みのことです。
資金移動業者とは「PayPay株式会社 」や「LINE Pay株式会社」など、銀行以外で送金サービスの提供が認められている事業者を指します。
そもそも従来まで、賃金の支払いは通貨による直接全額払いが原則でした(指定口座への振込は可)。
しかし、給与デジタルマネー払いが解禁されると、新たな選択肢として資金移動業者への賃金支払いが追加されます。
給与デジタルマネー払いはいつ解禁?日本の現状と海外の事例を紹介
日本政府が解禁に向けての準備を進めていることもあり、「給与デジタルマネー払い」という言葉を見聞きする機会が増えている方も多いのではないでしょうか。
ここで、給与デジタルマネー払いをめぐる日本の現状と海外の事例を紹介します。
厚生労働省は2023年春に解禁すると発表
2022年10月26日に厚生労働省の「労働政策審議会」が開かれ、給与デジタルマネー払いの制度導入を盛り込んだ労働基準法の省令改正案が了承されました。
省令は2022年11月に公布され、2023年4月1日に施行される見通しとなっています。
つまり給与デジタルマネー払いは、2023年にいよいよ解禁される予定です。
給与デジタルマネー払いが解禁される背景には、
が進むなか、資金移動業者の口座で給与を受け取るニーズも一定程度みられることなどが挙げられます。
そもそも給与デジタルマネー払いに関して、厚生労働省は「できる限り早期に実現する」といった目標を毎年掲げてきました。
しかし「労働者側の理解が得られない」などの理由もあり、なかなか実現に至らなかった背景があります。
その後も幾度となく議論が交わされ、ついに日本でも解禁が現実的なものになったのです。
そのような「給与デジタルマネー払い」ですが、海外ではすでに導入が進んでいます。
続いて、アメリカにおける例を見ていきましょう。
アメリカでは第三の給与支払い方法としてペイロールカードが普及
アメリカの給与支払い方法は「小切手」「銀行送金」が主流ですが、第三の給与支払い方法としてペイロールカードが普及しています。
ペイロールカードとは、給与を電子的に支給できる「カード式の給与受け取り口座」です。
アメリカでは州法によって規制のある州も存在しますが、ペイロールカードへの給与支払いが認められている州であれば、従業員は銀行口座を開設しなくてもカード上で給与を受け取れます。
かつて厚生労働省が出した資料のなかで、「2022年に約840万枚まで増加することが予想されている」と記載されたほど、アメリカでのペイロールカードは普及が進んでいます。
参考:資金移動業者の口座への賃金支払について 課題の整理②|厚生労働省
解禁後に企業が給与デジタルマネー払いを導入すべき4つの理由
解禁後に企業が給与デジタルマネー払いを導入すべき理由は、主に次の4つです。
自社で導入すべきかどうかの判断にお役立てください。
【理由1】便利な給与受け取り方法の導入による採用率・定着率の向上
給与デジタルマネー払いが解禁されると、従業員は自身が所有する「〇〇Pay」といったアプリなどで給与を受け取れます。
受け取った給与は、ATMで現金を引き出さなくてもそのまま店頭やネットショッピングなどで利用できて便利です。
また、残高にチャージする手間を省けるなどのメリットもあります。
厚生労働省が「資金移動業者の口座で給与を受け取るニーズも一定程度みられる」と表明しているように、企業が給与デジタルマネー払いを導入すると採用率・定着率の向上を期待できます。
また、銀行口座を持たない(持てない)外国人労働者の採用にも効果的です。
【理由2】給与デジタルマネー払いを導入する競合他社への対抗
給与デジタルマネー払いは採用率・定着率の向上を期待できるため、解禁後はあらゆる企業で導入されることが予想されます。
各業界での人手不足が深刻化するなか、魅力ある制度を導入したい気持ちはどの企業も同じです。
給与デジタルマネー払いを導入すれば、従業員ニーズに応えるために給与受け取り方法を追加する競合他社へ対抗できます。
【理由3】給与支払いに関連する作業コスト・人的コストの削減
給与デジタルマネー払いは、銀行口座を経由しなくても端末上の操作で手軽に給与を支払えます。
したがって、企業側は給与支払い業務の効率化を図ることが可能です。
さらに、銀行振込で発生する振込手数料を削減できるため、振込手数料の負担が少なく済みます。
【理由4】デジタル払いによる従業員の感染予防対策
給与のデジタル払いが実現すると、給与支払いにともなう人同士の接触がなくなります。
アプリで受け取った給与を各種支払いにあてれば、従業員はATMに並んでお金を引き出す必要もありません。
そのため、企業が給与デジタル払いを導入すると従業員の感染予防対策につながります。
給与受け取り方法の多様化に向けて企業が今からできる対策を紹介
前述したとおり、解禁後は多くの企業が給与デジタルマネー払い(デジタル・ペイロール)を導入することが予想されます。
競合企業と差別化するために、今のうちから給与受け取り方法の多様化に着手されてみてはいかがでしょうか。
例えば、すでに働いた分の給与を給料日より前に受け取れる「給与前払い制度」は、従業員ニーズの高い制度として知られています。
実際に、給与前払いサービス『前給』を利用できる店舗と利用できない店舗の比較では、従業員の定着率に約10%の開きが見られました。
給与前払い制度を導入することで企業が得られるメリットには、次のようなものが挙げられます。
なかでもきらぼしテックの『前給』は、2005年にビジネスモデル特許を取得し、パイオニア的存在として飲食業や人材サービス業をはじめとする各業界の大手企業に採用されてきました。
日本最大級の導入実績を誇る『前給』について、詳細が気になる方は以下から資料をダウンロードのうえご確認ください!
\ 従業員への福利厚生制度として利用できる /
給与デジタルマネー払いの解禁に向けた対策を進めよう
今回は、給与デジタルマネー払いの特徴や企業が導入すべき理由などを紹介しました。
ここで、これまでお伝えした内容をまとめます。
厚生労働省は給与デジタルマネー払いの解禁に向けて、
破産等により資金移動業者の債務の履行が困難となったときに、労働者に対して負担する債務を速やかに労働者に保証する仕組みを有していること
最後に口座残高が変動した日から少なくとも10年は口座残高が有効であること
など、労働者が安心して給与を受け取るための制度設計案を作成し、資金移動業者の口座へ賃金支払いをおこなう際の要件を定めています。
給与デジタルマネー払いの導入を検討する企業担当者は、国が出している声明文なども参考にしつつ、できる準備を進めてみてはいかがでしょうか。
次の記事では、国内でデジタル給与払いの議論がスタートした2015年以降の動きを重要な部分のみまとめて解説していますので、気になる方はチェックしてみてください。