給与前払い制度とは?関連する法律やメリット、導入時の注意点など全まとめ
給与前払いとは、従業員が働いた範囲内のお金を給与日前に受け取れる制度です。
企業が給与前払い制度を導入すると、従業員の満足度向上や求人応募率アップなどを期待できます。
しかし、内容をよく理解したうえで導入しないと、法律に違反してしまう可能性もあるため注意が必要です。
本記事では、給与前払い制度に関する下記の内容をお伝えします。
給与前払い制度と法律の関係にも触れますので、ぜひ最後までご一読ください。
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給与前払い制度とは?利用シーンや関連する法律を紹介
はじめに、給与前払い制度にまつわる以下3つの内容を解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
給与前払い制度とは?
給与前払い制度とは、働いた分の給与を給料日前の希望するタイミングで受け取れる制度です。
従業員が資金繰りに困った際も、給与前払い制度を活用すれば家族や高利金融に頼る以外の選択肢を増やせます。
従業員からのニーズも高く、福利厚生の一環として給与前払い制度の導入を検討している企業も多いです。
特にアルバイト求職者では、働いた分の給与を早く受け取る需要が高く、大手求人広告会社でのフリーワード検索ランキングでも「日払い」が上位になるケースがよく見られます。
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給与前払い制度がよく使われるシーン
給与前払い制度の利用シーンとして「従業員に急な出費が必要となったとき」が挙げられます。
例えば、冠婚葬祭や通院、突然の引越しなどのタイミングです。
もし支払日までの資金が足りないと判明したとき、従業員は日払いのアルバイトを始めたり週払いの会社へ転職したりすることを考えるかもしれません。
しかし、給与前払い制度があれば、従業員は働いた範囲内の給与を先に受け取れるよう会社に申請できます。
そのほか「夏休みに働いた分のお金を夏休み中に受け取りたい」と希望する学生アルバイトにとっても、給与前払いは嬉しい制度です。
下図のように、自分の好きなタイミングで給与を受け取れるようになると、従業員の生活スタイルは大きく変化します。
従業員にセーフティネットを構築できることもあり、正社員向けに給与前払い制度を導入する企業も増えています。
給与前払い制度と法律の関係性
給与前払い制度を導入・運用する際は、法律との関係性について正しく把握しておくことが重要です。
給与前払い制度に関連する法律には、次のようなものが挙げられます。
例えば、労働基準法第24条のなかに「全額払いの原則」があり、給与前払い制度を運用する際もこの原則に従わなければなりません。
具体的には、企業が従業員へ前払いする際、振込手数料は従業員負担ではなく企業負担とするのが基本です。
なぜなら、振込手数料を差し引いた分で前払い金を支払った場合、給与の全額払いではなくなってしまうからです。
このように「給与前払い制度と法律との関係」は切っても切り離せないため、導入・運用する際は、顧問税理士や顧問弁護士とも相談しながら制度設計するようにしましょう。
なお、給与前払い制度に関連する法律の詳細については、下記記事で解説していますのでご参照ください。
給与前払い制度を導入する2つの方法
給与前払い制度を導入する際は、下記2つの方法のうちいずれかを選択することになります。
それぞれのメリット・デメリットも紹介しますので、自社ではどちらの方法を選択すべきかの判断にお役立てください。
【方法1】自社で給与前払い制度を運用する
1つ目は、自社で給与前払い制度を運用する方法です。導入から運用まで自社で完結できることが大きなポイントになります。
自社で給与前払い制度を運用する主なメリット・デメリットは、次のとおりです。
自社で給与前払い制度を運用すると、サービス利用料が発生しないのが大きなメリットです。
社員数が少ないなど、給与前払い制度を運用する際の負担が大きくならない場合は、自社での運用を検討してもよいでしょう。
ただし、前払い関連業務(勤怠管理や送金手続きなど)は多岐に渡るため、従業員数が増えると担当者の業務負担が大きくなってしまいます。
そのため「担当者の業務負担を軽減したい」とお考えの場合、利用料が発生することを考慮しても給与前払いサービスを活用するのがおすすめです。
【方法2】給与前払いサービスを活用する
2つ目は、給与前払いサービスを活用する方法です。
今では多くのサービス提供企業が存在しており、前払い制度の導入時に給与前払いサービスを活用する企業も増えています。
給与前払いサービスを活用する主なメリット・デメリットは、次のとおりです。
給与前払いサービスを活用すると、担当者の業務負担を大幅に軽減できます。
加えて、サービスによっては「自社に最適な運用方法」を提案してくれることもあり、トータルコストを削減できるケースも少なくありません。
ただし、給与前払いサービスのなかには「全額払いの原則」など、各法律との兼ね合いでグレーな運用をしているものも存在するため、
など、慎重なサービス選びが求められます。
下記記事では、違法ではない給与前払いサービスの見極めポイントを解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
給与前払いサービスは大きく2種類に分類される
給与前払いサービスは、大きく以下2つの種類に分類されます。
それぞれ「どのような人におすすめか」も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
【種類1】社内融資型
社内融資型の概要やメリット・デメリット、おすすめの人は次のとおりです。
社内融資型は、給与ではなく労働実績内の社内融資制度として従業員へ前払いする仕組みです。
きらぼしテック株式会社が提供する『前給』独自の仕組みであり、各法律に抵触しない安心安全なサービスとして2,000社以上の企業に導入されています。
社内融資型の給与前払いサービスを活用すれば、「全額払いの原則」に抵触せずに前払いができるため、「手数料を従業員負担にしたい」と考えている企業にもおすすめです(※)。
※『前給』では手数料を従業員負担にできると整理しているものの、最終的な判断は導入企業に委ねています
社内融資制度の概要や導入後の効果については、下記記事で詳しく解説していますのでチェックしてみてください。
【種類2】給与型
給与型の概要、メリット・デメリットは次のとおりです。
給与型の給与前払いサービスを利用する場合、労働基準法との絡みに注意する必要があります。
前述したとおり、労働基準法第24条の規定により、給与は「通貨での全額支払い」が原則です。
したがって、給与型の場合は手数料を企業負担にする必要があるものの、なかには手数料負担を従業員に転嫁しているサービスも存在します。
給与型の給与前払いサービスの導入を検討する際は、手数料が従業員負担になっていないかチェックするようにしましょう。
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給与支払いサービスはさらに2つのタイプに分かれる
給与支払いサービスは、さらに以下2つのタイプに分かれます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
【タイプ1】プール型(自社支払いタイプ)
プール型は、前払い給料の必要資金を導入企業が用意する仕組みです。
「自社払いタイプ」「アウトソーシング型」などと呼ばれることもあります。
プール型のメリット・デメリットや代表サービスは、次のとおりです。
プール型は、後述する立替型の前払いサービスと比較して、手数料の従業員負担が少なく済む傾向にあります。
一方で、プール型では前払い給料の必要資金を自社で用意する必要があるため、残高不足にならないよう計画性を持って運用することが大切です。
【タイプ2】立替型(立替支払いタイプ)
立替型は、前払い給料の必要資金をサービス提供企業が用意する仕組みです。
「立替支払いタイプ」「システム提供型」などと呼ばれることもあります。立替型のメリット・デメリットや代表サービスは、次のとおりです。
立替型は、前払い給料の必要資金をサービス提供企業が用意してくれるため、管理や導入のハードルが低いのが特徴です。
ただし、立替分のコストが発生することもあり、プール型と比較して従業員の手数料負担が大きくなる傾向にあります。
また、立替型はその仕組み上、サービス提供企業が導入企業に振込原資を立て替える行為が法律上の「貸付け行為」とみなされてしまうケースもあります。
したがって、立替型のサービスの導入を検討する際は、
といった点をよく確認するようにしましょう。
ここまで、給与前払いサービスの「種類」や「タイプ」について紹介しました。
給与前払いサービスの仕組みや選定ポイントに関しては、下記記事でも詳しく解説していますのでチェックしてみてください。
給与前払いするメリット・デメリット
企業が給与前払い制度を導入するメリットは、大きく以下の5つです。
「急な資金需要が発生した際に安心感がある」などの理由から、給与前払い制度の導入は従業員の満足度向上に寄与します。
求職者や従業員からも人気の高い給与前払い制度を導入することで、人材確保に効果的です。
結果的に、求人誌に広告を出稿する場合などと比較して、採用コストを大幅にカットできるケースも少なくありません。
また、人材採用に頭を悩ませる企業も多いなか、競合他社と差別化するための施策としても有効です。
一方で、企業が給与前払い制度を導入する際は、以下のようなデメリットがあることも認識しておかなければなりません。
決まった給料日以外で従業員に給与を支給することになるため、導入企業は手間や費用面での負担が増えてしまいがちです。
したがって、上限回数や申請できるタイミングを就業規則に定めるなど、担当者の負担を軽減するための対策が求められます。
もちろん、担当者の負担を軽減できる「給与前払いサービス」を導入するのも一つの手です。
ただし、諸法令に準拠したサービスを選定しないと導入企業が摘発され、従業員に対する損害賠償責任を負うリスクもあるため注意しなければなりません。
給与前払いのメリット・デメリットについて、さらに詳しく知りたい方は下記記事をご参照ください。
給与前払い制度を導入する際の注意点3つ
給与前払い制度を導入する際の注意点は、大きく以下の3つです。
一部これまでの内容と重複するものもありますが、重要なポイントですのでしっかり確認しておきましょう。
【注意点1】前払いできる条件を明確にしておく
給与前払い制度を導入する際は、どのような条件であれば前払いの対象になるのかを明確にしておくことが大切です。
特に自社で運用する場合、前払いできる条件を明確にしておかないと「いつ・どのような方法で利用できるのか」従業員が迷ってしまいます。
また利用上限を定めていない場合、従業員の申請頻度が増えたときに担当者の業務負担が大きくなってしまうため注意が必要です。
【注意点2】手数料を従業員負担にしない
前述したとおり、労働基準法第24条に「全額払いの原則」があるため、給与前払い制度で発生する手数料は従業員負担にできません。
法律違反していることに気づかず手数料を従業員負担にしていた場合、摘発される可能性があるだけでなく、その事実が明るみになることで企業イメージの低下につながるリスクも潜んでいます。
給与前払い制度を運用する際は、手数料が従業員負担とならない制度設計を心がけましょう。
また、給与前払いサービスを利用する際、どのような手数料が発生するのかを事前に確認しておくことがおすすめです。
下記記事では、給与前払いサービスの利用で発生する手数料の種類や負担額などをまとめていますので、関心のある方はご参照ください。
【注意点3】法的課題をクリアしたサービスを選ぶ
3つ目は、法的課題をクリアしたサービスを選ぶことです。
具体的な対策としては、
などが挙げられます。
また、サービスによっては「安心安全なサービス」であることを明記していることもあるため、公式サイトを訪問してチェックしてみるのも一つの手です。
給与前払い制度を導入するなら『前給』がおすすめ
給与前払い制度は、求人応募率や従業員定着率の向上などを期待できる人気の高い制度です。
ただし、下記のように前払い制度の導入・運用にともなって発生する業務は多岐に渡るため、担当者の業務負担を軽減できる体制の構築が求められます。
そこで「前払い関連業務の負担を軽減したい」とお考えの方におすすめなのが、給与前払いサービスの導入です。
例えば、きらぼしテックの『前給』は、担当者の負担軽減につながるフォロー・サポート体制が充実しています。
『前給』は、導入企業の従業員数や前払い使用頻度などに応じた柔軟な制度設計が可能です。
そのことも評価され、これまで各業界の大手企業をはじめとする2,000社以上に導入されてきました。
銀行グループが運営する安心感や、法的課題をクリアした安全なサービスであることも『前給』が選ばれ続けている要因です。
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「ララPayプラス」なら前払い金をアプリで受け取って幅広く活用できる
給与前払いサービス『前給』は、従業員が前払い金をウォレットアプリ(ララPayプラス)で受け取れることも強みです。
『前給』の場合、前払い金を「ララPayプラス」で受け取る場合、一定の条件を満たせば手数料は発生しません。
加えて「ララPayプラス」なら、チャージした前払い金(前給)を幅広い用途で活用できます。
また、ララPayプラスはアカウントの作成と共に、審査不要・手数料無料で「バーチャルプリペイドカード」が発行されます。
バーチャルプリペイドカードとは、インターネット上でクレジットカードのように利用できる決済手段のひとつです。
バーチャルプリペイドカードにチャージした前払い金(前給)の残高は、ECモールでの支払いやオンラインゲームでの決済などに利用できます。
前払い金を幅広く活用できる「ララPayプラス」について、詳細が気になる方は以下のバナーをクリックのうえご確認ください!
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給与前払いでよくある4つの質問と回答
最後に、給与前払いでよくある4つの質問に回答します。
気になったものがあれば、ぜひチェックしてみてください。
【質問1】前払いは正社員以外にもできる?
前払い制度は、正社員以外にも提供することが可能です。
実際に、アルバイトやパート社員からのニーズも高く、勤務先の条件に「給与前払い制度」を希望する求職者も多く存在します。
下記記事では、アルバイトで働く方が給与前払いを利用できる理由や利用時の注意点などを解説していますのでご参照ください。
【質問2】給与前払いの仕訳はどうすればいいの?
給与前払いの仕訳は、解釈の仕方によっていくつかのパターンに分かれます。
例えば、「従業員への金銭の貸し付け」として処理する場合、借方の勘定科目は『貸付金』、貸方の勘定科目は『現金』を使用することが一般的です。
そのほか給与前払いでは『前払費用』や『立替金』、『仮払金』などの勘定科目を使うことが可能です。
下記記事では、給与前払いで使用する勘定科目や一般的な仕訳例を画像付きで解説していますので、ぜひご参照ください。
【質問3】給与前払いの導入がおすすめな業種は?
給与前払いの導入は、人材派遣業や飲食業・物流業など多くの業種でおすすめです。
当サイトでは、各業種の企業が給与前払い制度を導入するメリットや、実際に導入した企業の成功事例をまとめています。
気になる記事があれば、ぜひチェックしてみてください。
【質問4】前借りの相談には応じるべき?
結論からお伝えすると、従業員からの前借りの相談に対して、企業が応じる義務はありません。
一般的に前借りとは、従業員が「これから労働して得られる予定の給与」を担保にお金を借りることです。
従業員からの前借り申請に企業が応じるよう定める法律は存在しないため、相談に乗るかどうかの最終的な判断は各企業に委ねられています。
下記記事では、前借りの概要や関連する法律、メリット・デメリットなどを紹介していますのでご興味のある方はご一読ください。
給与前払い制度を利用して従業員の満足度を高めよう
今回は、給与前払い制度の概要や関連する法律、メリット・デメリットなどをお伝えしました。
ここで、これまで紹介した内容をまとめます。
給与前払いは、福利厚生のなかでも特に取り組みやすいものとして導入する企業が増えています。
従業員の満足度を高めるだけではなく、競合との差別化を図れることから人材採用の面でも効果的です。
法律との関連を整理しつつ、給与前払い制度の導入に向けた準備を始めてみてはいかがでしょうか。
なお、給与に関連するトピックとして、「〇〇Pay」などのキャッシュレス決済口座に給与が支払われる給与デジタルマネー払いが注目を集めています。
企業が給与デジタルマネー払いを導入すると、
などのメリットを期待できます。
下記記事では、給与デジタルマネー払いの特徴や企業が導入すべき理由などを解説していますのでご参照ください。
また、今後は給与受け取り方法の自由化だけでなく、
など、給与を受け取るタイミングの自由化もさらに進んでいくことが予想されます。
実際に、海外では隔週や週1の給料日が主流の国もあり、今後は日本でも給与の受け取り日が任意になるかもしれません。
給与受け取りをめぐる国内の現状や海外の給料事情に関しては、次の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。